カテゴリ:おとぎ話( 3 )
新しいオプション(後書きのようなもの)

数年前・・・

「ガソリンはいつかは無くなる。そうなった時にポルシェやフェラーリは電気自動車を作るのか?」

と、ふと思いました。モーターで静かに走るポルシェ。これはちょっと想像できません。

「これはいかんなぁ。やはりこうなる前に多少ムリをしてでも今乗っておくべきか・・・」

「でも、音くらいならばオーディオでなんとかなるのでは・・・?要はドライブゲームのサウンドと同じわけだし」

「あ、ひょっとしてコレならカレラGTのV10のエンジンサウンドの付いたボクスターとかもOK!?」

このお話は、そんな事を考えていた時に思いついたアイデアが元になっています。

私が小さい時、確か「石油は2000年くらいには無くなるのではないか」と言われていたように思います。でも、今ではあと70~80年は大丈夫との事です。これは、油田を探す技術と、ひとつの油田からよりたくさんの石油を吸い上げる技術が向上したからだ・・・と聞いた事があります。しかし、いくら技術が向上しようともいつかは「石油の無くなる日」が来るのは間違いありません。

さて、そうなった時、ポルシェはどうするのでしょうか・・・。非常に気になる所です。
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by akiyuki987 | 2005-10-30 20:50 | おとぎ話
新しいオプション(後編)

「趣味のクルマに乗るのは何年ぶりだろう・・・」

目の前の納車されたボクスターを見て、年月を数える。

「40歳の時に初めて買った987、14年後、どうしてもガマンできなくなって買い換えた989、そして、それを9年後に事故で失った時には、ポルシェはもうフラットシックスを作っていなかった・・・」

モーターで静かに走るポルシェにはどうしても魅力を感じる事が出来ず、私はポルシェから降りたのだった。

しかし、今目の前にあるボクスターには、そんな年寄りの気持ちを動かす新しいオプションが付いていた。

「ポルシェ・エンジンサウンド・システム(PESS)」だ。

納車されたばかりのボクスターに乗り込み、モニターに触れてメニューを出す。PESSのセットアップを呼び出すと、歴代ポルシェの型式が出てきた。

「なんと、ナローからあるのか」

911型を選択し、アクセルをあおると・・・「ブゥオン!」ボクスターが叫んだ。

アクセルにあわせて室内のスピーカーからエンジン音が流れたのだ。

「くぅ~、たまらん。やっぱり年寄りにはこの音が無いと物足りん」

全て実車からサンプリングしたと言うそのサウンドは、室内に17個あるスピーカーから出力され、臨場感あふれる空間を作る。

「お、パナメーラもあるのか」

メニューからポルシェ初の4ドアセダン、パナメーラを選びアクセルをあおる。

ブゥオンオン!

「お、エンジンが前に移動したぞ」

ちゃんとエンジンの搭載位置にあわせて音の出方が変わるのだ。

「でもやっぱりポルシェならば後ろから聞こえねば・・・」

993を選んでアクセルを吹かす。「クゥオン!」と空冷の乾いた音が後ろから響く。

「いいぞ・・・。やはりポルシェはこうでないといかん」

そして、550スパイダー、カレラGTなど一通り遊んだ後・・・

「さてと・・・やはり初ドライブはこいつだろう」

私は、今から30年前に初めて手に入れた987型ポルシェボクスターを選択すると、屋根を開けて走り出した。

初めてのポルシェで走ったあの峠道を目指して。
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by akiyuki987 | 2005-10-30 20:47 | おとぎ話
新しいオプション(前編)

今日、新しいボクスターが納車された。

986から数えて6世代目、燃料電池車になって2世代目の、2037年型だ。

今から20年近く前、国内のとあるメーカーが燃料電池車の量産に成功した。ガソリンエンジンのクルマに10%程のプレミアを乗せただけの価格でそのクルマは発売され、あっと言う間に世の中に広まった。

大気汚染、地球温暖化、そして、石油の枯渇。

もちろんこんな問題は最近言われ出したのでは無い。今から半世紀以上も前からあったが、実際にガソリン車の代替が見つからなかったので先延ばしにしてきたのだ。

そこへ燃料電池車である。

問題の多かったガソリン車への風当たりは急激に強くなり、社会的責任を果たさなければならない自動車メーカーは、あるメーカーは技術供与を受け、またあるメーカーは独自に開発してガソリン車から燃料電池車へと切り替えて行ったのだった。

ポルシェとて例外ではない。

いつまでも社会悪であるガソリン車を作り続けているわけには行かず、8年ほど前からガソリンエンジンを作らなくなっていた。

勿論、燃料電池車になっても走りへのこだわりはあった。

燃料電池を小さく分割しレイアウトの自由度を高め、なるべく重量物をクルマの中心に、重心が低くなるように配置したり、ほとんどの燃料電池車がスペースを有効利用する為にホイールの中にモーターを仕込んだのに対し、ポルシェは「そんなことすればホイールが重くなって軽快感が無くなる」と、わざわざ今までエンジンのあった位置にモーターを置き、シャフトを使って後輪を駆動したりしたのだ。

その為、走りに関してはポルシェとして文句の無いレベルにまで達していたが、ひとつだけ足りないものがあった。

「音」である。

モーターで静かに走るポルシェには、フラットシックスの咆哮が欠けていたのだった。



続く
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by akiyuki987 | 2005-10-30 01:15 | おとぎ話