新しいオプション(前編)

今日、新しいボクスターが納車された。

986から数えて6世代目、燃料電池車になって2世代目の、2037年型だ。

今から20年近く前、国内のとあるメーカーが燃料電池車の量産に成功した。ガソリンエンジンのクルマに10%程のプレミアを乗せただけの価格でそのクルマは発売され、あっと言う間に世の中に広まった。

大気汚染、地球温暖化、そして、石油の枯渇。

もちろんこんな問題は最近言われ出したのでは無い。今から半世紀以上も前からあったが、実際にガソリン車の代替が見つからなかったので先延ばしにしてきたのだ。

そこへ燃料電池車である。

問題の多かったガソリン車への風当たりは急激に強くなり、社会的責任を果たさなければならない自動車メーカーは、あるメーカーは技術供与を受け、またあるメーカーは独自に開発してガソリン車から燃料電池車へと切り替えて行ったのだった。

ポルシェとて例外ではない。

いつまでも社会悪であるガソリン車を作り続けているわけには行かず、8年ほど前からガソリンエンジンを作らなくなっていた。

勿論、燃料電池車になっても走りへのこだわりはあった。

燃料電池を小さく分割しレイアウトの自由度を高め、なるべく重量物をクルマの中心に、重心が低くなるように配置したり、ほとんどの燃料電池車がスペースを有効利用する為にホイールの中にモーターを仕込んだのに対し、ポルシェは「そんなことすればホイールが重くなって軽快感が無くなる」と、わざわざ今までエンジンのあった位置にモーターを置き、シャフトを使って後輪を駆動したりしたのだ。

その為、走りに関してはポルシェとして文句の無いレベルにまで達していたが、ひとつだけ足りないものがあった。

「音」である。

モーターで静かに走るポルシェには、フラットシックスの咆哮が欠けていたのだった。



続く
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by akiyuki987 | 2005-10-30 01:15 | おとぎ話
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